『ものの見方が変わる 座右の寓話』

著:戸田智弘

幼少期に絵本などで聞いたお話が、大人になってからこそ心に響くと感じたことはありませんか?


イソップ童話や世界の民話、古典など、古今東西で語り継がれてきた77の寓話と、その話から学べる教訓や真理を、戸田氏が独自の解説も交えながら紹介しています。


著者は、「寓話の目的は教訓や真理を伝えることであり、お話そのものはそれらを届けてくれる”運搬手段”である。別の言い方をすると、寓話においては教訓や真理こそがその核であり、お話はそれらを包み込む”外皮”である。」と言います。


ではなぜこのような二重構造をとるのでしょうか。それは、「教訓は苦く、真理は激しいので、そのままでは食べられない。ならば、楽しいお話で教訓や真理を包んで読者に届けよう」としているからです。


幼少期に純粋に親しんだお話が、大人になった後から心により響く理由も、ここにあるのかもしれませんね。


ここで私が特に印象に残ったお話のひとつ、中国の故事を紹介します。斉の国の管仲と隰朋が孤竹国へ春に出陣し、冬に凱旋する途中の出来事です。


「道に迷った時、管仲が『老馬の知恵を借りよう』と言って、老馬を放し、その後をついていくと、果たして道が見つかった。また別の時には、山の中を進んでいると、水が無くなってしまった。隰朋が『蟻とは、冬は山の南側に住んでおり、夏には山の北側に住んでいる。高さが一寸の蟻塚があったら、その地下八尺ばかりのところに水があるものだ』と言った。蟻塚を見つけてそこを掘ると、果たして水が見つかった。」


管仲と隰朋は、賢人知者です。そんな2人でも、わからないことはわからないと素直に認め、その道の達人である老馬と蟻の知恵に頼ろうとしたのです。


学問でも、ビジネスでも、趣味でも、私たちが何かを学び始めるときにはすでに、「巨大な体系」が存在しています。学ぶ時の前提として、「自分はその巨大な体系に遅れて入っていくという自覚」が何よりも大切だと感じました。自分自身はまだまだ足りない、知らないことばかり、と謙虚な姿勢を忘れずにいれば、いつまでも学び続けることができるのではないでしょうか。


本著で紹介されている教訓のジャンルは、仕事や人生、組織、思考など多岐に渡りますが、どれも大切だけど目まぐるしく過ぎていく日常に追われて、つい忘れてしまいがちなことばかりです。少し日常から離れて、時折絵本を読んでいた頃の童心に帰りながら、人生の大切なことを思い出してみませんか?


もうひとつ私が一押しするお話は、No.60の「生クリームに落ちた三匹のカエル」です。


こちらはぜひ実際にお手に取って、ご一読ください。


CENTREスタッフ 河合

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