【書籍レビュー】宮台 真司 / 藤井聡 神なき時代の日本蘇生プラン

宮台 真司 / 藤井聡(著

神なき時代の日本蘇生プラン


「神なき時代」という言葉に、生きづらさや価値の空白を感じている人は少なくないでしょう。本書では、宮台真司・藤井聡両氏が現代日本を「損得マシーン」「自己保身に走る人々」の集まりと見なし、根本から問い直しています。

その背景には、経済第一主義が道徳を浸食し、公共的な価値や連帯が見失われてきたという認識があります。本書の冒頭では、天皇制度・キリスト教・メタバース・街づくり・経済政策・社会福祉と、多様な領域を横断しながら、「理を欠いた社会」を俯瞰します。この問いに向き合うことが、まず「蘇生プラン」の第一歩です。



著者たちは、ただ時代を嘆くのではなく、観察と分析を通じて「何を取り戻せるのか」を提示しています。たとえば、「道徳=倫理的判断」から「道理=共有された社会規範」へと視点を転換する議論がそのひとつ。

また、彼らは「制度が人をつくる」と同時に「人が制度をつくる」という双方向性に着目。つまり、私たち一人ひとりの質的な選択が、社会の筋を変え得ると説きます。

この本が提示する蘇生プランには、既存の制度を見直すだけでなく、私たち自身のあり方を変えるという視点が貫かれています。


読了後、読者の胸に残るのは「変化可能性」の種です。

本書は決して無力を語らず、むしろ「この社会を、私たちが動かせる」という希望を静かに提示します。たとえば、「損得だけで動く社会」ではなく、「理(ことわり)・道(みち)・義(ぎ)」を考えられる社会へ――。

また、天皇・宗教・メタバースといったテーマを通じて、「価値の源泉をどこに置くか」が今ほど問われている時代はありません。そして、その問いに対して、私たちは「ただ知る」ではなく「自分の言葉で考え、行動する」ことが求められています。

この本は、知識を得るだけの読書ではなく、自分自身を変えていくための読書となるでしょう。“クズになってしまわない”という言葉が胸を刺すのは、それが他人事ではなく、私自身の生き方を問うからです。


「今日、自分は何を観察してきたか?」「学んだことをどう使えるか?」――

その問いが、あなたの問いである限り、社会もまた、少しずつ変わっていくかもしれません。

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