あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書
著:保阪正康
前回からの「CENTREの本棚」では、以前ご掲載いただいた「HIROBA!」様で紹介させていただいた5冊の紹介を、加筆してお届けいたします。
3冊目は、「あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書」です。「あの戦争」とは太平洋戦争のこと。日本という国とっての大きな曲がり角。善と悪だけの話ではなく、あの時、あの瞬間、日本に何が起きたのか。保阪正康氏の著書です。
私たちは、戦争を知ることから決して逃げてはならないと思います。感情論ではなく、善悪の分断ではなく、確かにあった出来事として、百人百様の戦争について知り、あとは自分で考えることが必要なのではないでしょうか。本著は、戦後50年の2005年に出版され、あの戦争にはどういう意味があったか、何のために310万人もの日本人が亡くなったか、どういう構造の中で何が起こったのかを整理し、確認することができます。
著者は、戦後日本の高度成長を成し遂げたその集中力を、太平洋戦争に突入した時の勢いに重ねており、ひとたび目標を決めると引けずに猪突猛進していくのが、戦前戦後共通した日本人の正直な姿だと語っています。私たちはグローバル社会の中でどうあるべきか、あの戦争からにじみ出る国民性をしっかりと自認し、ひとりひとりが考え、行動していかなければいけないのかもしれません。
歴史を知るだけではなく、その歴史から学び、今に活かすことが現代に生きる私たちの使命です。本著のあとがきにも、「あの戦争」のなかに、私たちの国に欠けているものの何かがある。その何かは、戦争だけではなく、戦後社会にあっても今なお現実の姿として指摘できる、と書かれています。戦略ではなく戦術に走ること、ほころびに継ぎをあてるだけの対応策に入り込むこと、現実を冷静に見ないで願望や期待を事実に置きかえてしまうこと。そのどれも、今の日本にも見ることができるのではないでしょうか。
まずは自分から、そして自分が属するコミュニティへ、そして地域、社会へ、「あの戦争」全体から知ることができることを活かすも、私たち次第ですね。
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