あるものでまかなう生活

著:井出 留美


「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことを指します(農林水産省、消費者庁HPより)。捨てなくてもよいものを捨ててしまうことで廃棄物の増加と過剰供給の両面を招いており、「つくる側」「食べる側」双方に原因を探り、地球環境保全と豊かなライフスタイルの両立を目指す取り組みが進められています。


著者である井出氏は、現行の「食品ロス削減推進法」の成立に尽力され、食品ロス問題ジャーナリストとして全国的に活動をされています。


本著は、そんな地球規模の問題である「食品ロス」を「自分ごと」として捉え、かつその解決につながる「コツ」を「新しい日常」というライフスタイルとして落とし込む事例が、井出氏の優しい語り口で紹介されています。


書籍タイトルの「あるもの」とは、食品などの物質を指すと共に、恩恵を受けている自然環境そのもの、そしてそれぞれ個人個人が持つ資質そのもの、「自分自身に与えらえた命をしっかり生きる」という意味も込められています。食品ロス問題との向き合いは、「生き方」との向き合いとも言えますね。


全ての人が地球規模の問題を解決しようと行動を起こすことは難しいかもしれません。ただ、目の前の食べ物や、目の前の人を大切に思い、その思いを一歩進んだ行動に変えていくことはできるのではないかと思います。

野菜や果物の保存方法や切り方、皮や芯の再利用、賞味期限の考え方、スーパーでの買い物の工夫まで、あるものを最大限そして最後まで使いきることで、より経済的でより豊かになるコツがたっぷりです。ぜひ参考にしていただきたいものばかり!


本著は、個人の暮らしへの提案と共に、企業の商慣習に対して大きな警鐘を鳴らしています。大手食料品小売や大手コンビニが行ってきた商品の管理方法は、私たちに種類豊富な商品棚を提示してくれておりますが、同時にそれは選ばれない商品の増加と商品寿命の短期化による廃棄を増加させることに繋がっています。企業は環境と社会との共生により活動を持続することができます(SDGsウェディングケーキモデルがそれを視覚的にわかりやすく伝えています)。数字のみの判断で「捨てる方が儲かる」という状態は、そのモデルそのものを転換する必要があります。


地球からの恵みを受けながら、食べ物を通じて人が人に思いを寄せることで、豊かさと環境保全は両立できる、そう信じさせてくれる一冊です。

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