【書籍レビュー】アーサー・C・ブルックス / 人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法

アーサー・C・ブルックス(著

人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法


成功を積み重ね、キャリアの“頂点”に達したと感じる人ほど、あるとき虚しさや“何か足りない”という感覚に襲われる――本書はその現象を「ストライバー・クルー(達成者の呪縛)」と名付け、社会科学的に解明しています。

著者ブルックス自身もまた、ハーバード大学で教鞭をとる中で、「自分の能力が衰え始めている」という実感を抱き、それが人生後半の戦略を探る出発点となりました。

この書籍では、「後半の人生」を単なる“老い支度”として捉えるのではなく、「新しいタイプの成功と充足」が可能であると提示します。


ブルックスは、キャリア前半で重視されがちな「流動性知能(fluid intelligence:新しい問題を解く能力)」が、40〜50代でピークを迎え、その後は低下する傾向があると指摘しています。

その代わりに「結晶性知能(crystallized intelligence:経験・知識を生かす能力)」はむしろ高まるという知見をもとに、「これまで積み重ねた知を、どのように活かして次の軸に転換するか」を説いています。

つまり、若き日に“量”を追った働き方をしてきた人が、後半戦では“深さ”や“貢献”に視点を移すことが、豊かな人生につながるというメッセージです。


成功の定義を“収入・地位・成果”から“関係・目的・信仰(信念)”へと変えること。ブルックスは特にこの転換を強調します。

本書によれば、後半を生き抜くためには、「信頼できる人間関係を築いてきたか?」「自分が何のために働いてきた/働くのかを言語化できるか?」「自らの価値観や世界観と整合的な“信仰・信念”を持てているか?」という問いに丁寧に向き合うことが必要です。

この三つが、流動性知能の衰えがもたらす焦燥を、結晶性知能の活きるステージへと転じさせるキーとなります。


読了後、「これからの10年、私は何のために働くのか」「どんな影響を残したいのか」という視点が、自然と立ちあがるでしょう。

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