【書籍レビュー】勝間和代 / 40歳からの「仕事の壁」を越える勝間式思考
勝間和代(著
40歳からの「仕事の壁」を越える勝間式思考
40歳前後になると、多くの人が“仕事の壁”を実感します。
体力の低下、役職や責任の増加、スキルの陳腐化、若い世代との価値観の差…。
勝間和代さんは、本書でこうした不安を否定するのではなく、「思考をアップデートすることで壁を越えられる」と静かに語りかけます。
ポイントは、年齢ではなく“考え方のクセ”に焦点を当てている点です。
壁を越えるとは、頑張り続けることではなく、「今の自分に合った働き方に改良していくこと」だと本書は明確にしています。
本書が優れているのは、40代特有の状況を曖昧にせず、きちんと言葉にしてくれる点です。
・努力量と成果が比例しなくなる
・情報処理スピードが鈍る
・役割が増え、時間が奪われる
・変化の激しさに追いつけない不安
・20代の頃と同じ働き方が通用しない
これらを“衰え”として扱うのではなく、「ライフステージの変化によって働き方の構造を見直す必要がある」と捉えるところに勝間さんらしい視点があります。
問題を「気合で乗り越える」のではなく、構造を理解し、仕組みを変えることで軽くする。
これは本書全体を通して一貫する哲学です。
勝間さんは、仕事の壁を越える方法として、“努力量を下げて成果を上げる”という逆説的なアプローチを提案します。
たとえば、
・反射的に受けてしまう仕事を減らす
・得意分野を可視化し、そこに集中する
・投資対効果で行動を判断する
・認知負荷の高いタスクを機械や仕組みに任せる
・余白時間を「思考の整理」に使う
これらの方法は、40代に限らずすべての働く人に役立ちます。
とくに印象的なのは、“能力”ではなく“負荷”に着目して働き方を調整する
という視点です。「頑張り続ける」のではなく、“負荷が低くても成果が出る仕組み”に切り替える。これこそが勝間式の本質です。
本書は、精神論を語る本ではありません。
むしろ勝間さんは、「自分は変われる」という実感(自己効力感)こそが、壁を越える力になると強調します。
・小さな改善を積み重ねる
・変えられる範囲だけに集中する
・周囲との比較を手放す
・学び続けるための“続けられる仕組み”を持つ
このような具体策を通して、“できることが増える”感覚が、年齢にとらわれない未来の働き方へ導いてくれます。
本書が読者を明るい方向へ連れていく理由は、問題を矮小化するのではなく、「解決のための手順」をひとつずつ提示してくれるからです。
壁を越えるというのは、頑張り続けることではありません。自分の働き方を穏やかに“更新”していくこと。そのためのヒントが、静かに、しかし明快に詰まった本です。
仕事に悩む40代だけでなく、30代の準備、50代の再設計にも役立つ“長く使える思考の道具”。CENTREでゆっくり読みたい、大人のための働き方の本です。
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