【書籍レビュー】クレイグ・ライト / イェール大学人気講義 天才~その「隠れた習慣」を解き明かす

クレイグ・ライト(著

 イェール大学人気講義 天才~その「隠れた習慣」を解き明かす


「天才」と聞くと、特別な才能や生まれ持ったギフトを思い浮かべる人も多いでしょう。

しかし、クレイグ・ライト氏の本書は、その常識に挑みます。彼が担当した米国名門校での講義をベースに、「才能」でも「努力」でも説明しきれない“天才になる人の習慣”を14のレッスンに整理し、問いを投げかけています。


まず、本書の問いはシンプルです。

「天才とは何か?」「それはどのようにして生まれるのか?」「私たちにもその条件はあるのか?」。ライト氏は、偉大な科学者、芸術家、起業家、政治家たちの行動や思考の構造を精査し、天才を“変化を起こす存在”と定義します。


本書には、IQだけでは説明できない、好奇心の深さ、リスクを引き受ける姿勢、他者との差異を活かす観点などが提示されます。たとえば「強い学習意欲を育てよ」「逆転の発想をせよ」「運をつかめ」「リラックスせよ」といった章題は、天才が必ずしも完璧ではなく、むしろ“常識を疑い、動き、休む”という振れ幅の中に存在していたことを示しています。


特に印象深いのは、「先天的か後天的か」という問いに対して、著者が〈天才=環境・資質・行動が重なる“嵐”のようなもの〉という視点を提示している点です。これは、「才能がないから無理」というあきらめを手放す契機となり得ます。なぜなら、「天才的行為は、特別な人だけの特権ではなく、ある思考・習慣・構えの上に立つ可能性がある」というメッセージが読み取れるからです。


読了後には、あなたの「普通」が少し変わって感じられるかもしれません。

会議室での発言、チームでのアイデア出し、課題へのアプローチ。

それらに「ひらめき」や「視点の転換」をもたらす種が、実はあなたの中にもあるのだと、静かに気づかされる――そんな読後感があります。


ただし、この本は「どうやって天才になれるか」の即効性のある手法書ではありません。むしろ「天才をつくるとはどういうことか」を丁寧に描いた教養書です。ゆえに、急いで実践しようとせず、一冊をじっくり味わいながら、自分なりの“習慣の種”を探す時間にすることをおすすめします。

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