【書籍レビュー】齋藤 孝 / 図解 渋沢栄一と「論語と算盤」
齋藤 孝(著
図解 渋沢栄一と「論語と算盤」
―― 学びを動かし、時代を生きるための“実学”として
渋沢栄一が『論語と算盤』を著したのは、大正5年。
経済成長と社会不安が入り混じる時代の中で、彼は「道徳と経済の調和」を提唱しました。
しかしその核心にあるのは、単なる理想論ではなく、観察と思考、そして実行の連鎖です。
彼は時代の変化をよく見つめ、人の営みを学び、そこから「次に何をすべきか」を導き出しました。
この図解版は、齋藤孝氏がその思想を現代の読者にわかりやすく整理した一冊です。
経済人としての渋沢ではなく、「学び続ける人間・渋沢」の姿が見えてきます。
論語は“理想”を語り、算盤は“現実”を扱います。
渋沢はこの二つを対立させず、むしろ行き来することで社会を動かしました。
彼が語った「士魂商才(しこんしょうさい)」とは、精神と実務の両輪を意味します。
この考え方は、ビジネスや教育、さらには日々の判断にも生きています。
本書が図解という形式をとるのは、思想を理解するだけでなく、行動に落とし込むため。
“考えるだけではなく、使ってみる”。
それが渋沢栄一の学び方であり、今を生きる私たちが学ぶべき姿勢でもあります。
渋沢は、どんな状況でも学びを止めませんでした。
政治も経済も、人も制度も――あらゆるものを観察し、理解し、自分の言葉で再構成する。
そこから得た知恵を、社会の仕組みへと還元していったのです。
この“実学の循環”こそ、彼の生涯を通じた軸でした。
私たちもまた、情報があふれる時代に生きる者として、学びを「動かす力」が問われています。
知識を集めることよりも、どう活かすか。
それを考えるためのヒントが、この本の随所に散りばめられています。
渋沢栄一の言葉を、今日の自分の仕事や暮らしに重ねて考える。
「学び」と「働く」が繋がる瞬間が、そこに見えてくるはずです。
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