【書籍レビュー】ゆりか / 本音を言おうとすると涙が出てくる HSPの繊細さを才能に変える魔
ゆりか(著
本音を言おうとすると涙が出てくる HSPの繊細さを才能に変える魔法
HSP(Highly Sensitive Person)は「刺激に敏感で、生きづらい気質」と説明されることが多いものです。しかし著者・ゆりかさんは、HSPを“欠点”ではなく、“深く感じ取る力を持った気質”として丁寧に描き直しています。
本書の冒頭で語られるのは、「本音を言おうとすると涙が出てしまう理由」。それは、感情が動く速度が人より速く、言葉より先に心が反応してしまうから。自分の気持ちを大切にしようとするほど、涙があふれてくる――著者は、この現象をやさしく解きほぐしています。
「涙が出るのは心が壊れそうだからではなく、心が真剣に反応しているから」
その言葉に救われる読者は少なくないでしょう。
本書が特徴的なのは、HSPという概念をただ説明するのではなく、“どう生きるか”という実践方法に落とし込んでいる点です。
ゆりかさんが挙げるのは、
・感情を自分で言語化する方法
・「断る」「距離を置く」を恐れない技術
・人間関係で“自分の境界線”を守るスキル
・繊細さを仕事で活かす発想
といった、具体的で現実に使える“心の使い方”。
HSPは人の表情・声の変化・空気のざわつきなどを敏感に察知してしまうため、疲れやすい分、誰かを深く理解したり、小さな変化に気づけたりといった強みも持ち合わせています。
本書はその「弱み」と「強み」をきれいに整理し、繊細さは正しく扱えば“才能”になるという視点を一貫して提示します。
本書の後半では、HSPが“自分らしく生きる”ための土台として、
・ひとりの時間を確保する
・無理に合わせない
・心のスペースを広げる
・自分だけのペースで動く
といった「セルフケアの設計」が丁寧に描かれています。
HSPは「がんばりすぎる」ことで心を消耗しがちです。しかし、著者は言います。
「自分を最後にしてはいけない」「優しさは、まず自分に向けてこそ本物になる」
読了後、心がふっとゆるみ、“そのままの自分でも生きていける”という実感が静かに灯るような一冊です。
この本は、そんなHSPの方が自分を責めるのではなく、自分を大切に扱うきっかけを与えてくれます。コーヒーを片手に、ゆっくりページをめくるのにぴったりの本です。
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