【書籍レビュー】永松 茂久 / 君は誰と生きるか
永松 茂久(著
君は誰と生きるか
永松茂久さんは本書の中で、「人生は誰と生きるかで決まる」と語りますが、その言葉は働く私たちにとっても非常に本質的です。
人は、自分が過ごす時間の多くを“誰かと協働する時間”として使っています。そのため、近くにいる人の言葉や態度、価値観から強い影響を受けることになります。
ネガティブな言葉が多い環境では、挑戦しようとする気持ちが削がれ、誠実で前向きな人のそばでは、自分も自然と誠実さを保てる。
これは精神論ではなく、感情や思考が周囲に“同調”するという心理的メカニズムです。
職場環境の改善や個々の成長は、スキルや努力だけでなく、“誰と働くか”という外部環境によって大きく左右される。
本書はまず、その事実を静かに示しています。
本書が特に実践的なのは、良い仕事を生むためには「良い人間関係を“選ぶ”だけでなく、“育てる”必要がある」と説いている点です。
信頼される人とは、特別な才能を持つ人ではありません。
日々の仕事において、
・約束を守る
・感謝を言葉にする
・不機嫌を周囲にぶつけない
・他者の成功を素直に喜ぶ
といった“当たり前を丁寧に行う人”です。
この積み重ねは一見地味ですが、こうした姿勢こそが、周囲に安心感を与え、「一緒に働きたい」と思われる“縁の土台”になります。
永松さんは、縁は偶然ではなく、自分の態度の積み重ねが引き寄せるものだと述べます。
言い換えれば、良い仕事は人間関係という見えない基盤の上に成り立っているのです。
本書が普遍的なのは、「誰と働くかを選ぶ権利と責任」は、経営者やリーダーに限られるものではない、という点です。
私たちは皆、毎日の選択によって職場の空気に影響を与えています。
・どんな言葉を使うか
・どんな態度で人に接するか
・どんな価値観の人と近くにいるか
これらは、立場や職位に関係なく、働くすべての人が持つ“環境づくりの力” です。
愚痴や否定に流されず、小さな誠実さを積み重ねられる人が一人いるだけで、職場の雰囲気は確実に変わっていきます。
永松さんの言葉は、「職場をより良くするのは誰か特別な人ではなく、目の前の仕事に誠実に向き合う“あなた自身”だ」という励ましとして響いてきます。
この本は、人間関係を整理する“人生論”というよりも、働く人がより良い仕事をするための、人間関係の整え方を教えてくれる一冊です。
最近、誰と最も多く時間を使っているか、その人の言葉は、自分を前に進めてくれるか、自分は周囲にどんな影響を返しているか、そんな問いを静かに投げかけてくれます。
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